国税庁の最新調査でわかった業種別の平均給与
国税庁の「民間給与実態統計調査」は、民間の事業所が1年間に支払った給与をもとに、給与の実態を明らかにする統計です。2026年9月に公表された令和7年分(2025年に支払われた給与)の結果では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円で、前年から1.9%増え、5年連続の増加となりました。
業種別に見ると、平均給与は次のとおりです。ここでいう「平均給与」は給料・手当と賞与の合計で、税金や社会保険料が引かれる前の金額です。
| 業種 | 平均給与 | うち賞与 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 854.4万円 | 163.8万円 | 2.6% |
| 金融業,保険業 | 725.6万円 | 173.1万円 | 3.3% |
| 情報通信業 | 681.9万円 | 124.3万円 | 3.4% |
| 建設業 | 590.3万円 | 86.8万円 | 4.4% |
| 製造業 | 573.0万円 | 111.9万円 | 1.0% |
| 学術研究,専門・技術サービス業,教育,学習支援業 | 567.9万円 | 99.8万円 | 3.4% |
| 不動産業,物品賃貸業 | 512.5万円 | 68.3万円 | 3.4% |
| 複合サービス事業 | 509.5万円 | 100.1万円 | 4.0% |
| 運輸業,郵便業 | 482.5万円 | 59.8万円 | ▲1.0% |
| 医療,福祉 | 424.0万円 | 52.9万円 | ▲1.2% |
| 卸売業,小売業 | 413.4万円 | 57.9万円 | 0.9% |
| サービス業 | 401.7万円 | 45.9万円 | 3.2% |
| 農林水産・鉱業 | 393.7万円 | 53.7万円 | 13.2% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 275.8万円 | 16.8万円 | ▲1.3% |
| 業種平均 | 486.6万円 | 74.9万円 | 1.9% |
出典:国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査結果について」をもとに編集部作成(千円単位の公表値を万円に換算。前年比は平均給与の対前年伸び率で、▲はマイナス)
最も高い電気・ガス・熱供給・水道業と、最も低い宿泊業,飲食サービス業とでは、平均給与に約3倍の開きがあります。一方で、伸び率を見ると建設業や複合サービス事業が全体平均を大きく上回り、運輸業,郵便業、医療,福祉、宿泊業,飲食サービス業は前年を下回りました。金額の順位と、伸びている業種は必ずしも一致しないことが分かります。
平均給与の数字をそのまま受け取ってはいけない4つの理由
業種別の平均給与は業界の全体像をつかむには役立ちますが、20代が「自分がその業種に移ったらいくらもらえるか」を考える材料としては、そのまま使えません。理由は大きく4つあります。
平均給与を読むときの注意点
- 全年齢の平均である:勤続年数の長いベテラン層も含めた平均なので、20代の給与は平均より低く出るのが一般的です
- 正社員とそれ以外が混ざっている:パート・アルバイトなどの割合が高い業種ほど、平均は低く出やすくなります
- 職種や企業規模の差がならされている:同じ業種でも、職種や会社の規模によって給与水準は大きく違います
- 事業所が支払った給与の集計である:複数の勤務先から給与を受けている人は、それぞれ別の人として数えられます。個人の収入全体を表す数字ではありません
たとえば平均給与が低めに出ている業種でも、正社員に限れば見え方が変わることがあります。調査全体でも、正社員(正職員)の平均給与は559万円、正社員(正職員)以外は210万円と大きな差があります。業種の平均が低い理由が「給与水準が低いから」なのか「働き方の構成が違うから」なのかは、平均給与の数字だけでは判断できません。
「前年より増えた=昇給した」とも限らない
平均給与の伸び率も、そのまま「その業種で働く人の給料が上がった」という意味にはなりません。働く人の年齢構成や、正社員とそれ以外の比率が変われば、一人ひとりの給与が同じでも平均は動きます。1年分の伸びだけで業種の将来性を判断せず、複数年の推移とあわせて見るのが安全です。
20代こそ見ておきたい「年収に占める賞与の割合」
業種別データの中で、20代の転職で意外と参考になるのが平均給与のうち賞与がどれくらいを占めているかです。先ほどの表から、平均給与に占める平均賞与の割合を計算すると、次のようになります(業種平均は15.4%)。
| 業種 | 賞与の割合 |
|---|---|
| 金融業,保険業 | 23.9% |
| 複合サービス事業 | 19.6% |
| 製造業 | 19.5% |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 19.2% |
| 運輸業,郵便業 | 12.4% |
| サービス業 | 11.4% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 6.1% |
※国税庁の公表値(千円単位)をもとに編集部で計算。上位4業種と下位3業種を掲載
賞与の割合が高い業種は、会社の業績や個人の評価によって年収が上下しやすい傾向があります。好調な年は大きく増える一方、業績が落ちれば真っ先に削られるのも賞与です。反対に割合が低い業種は、年収の大部分を毎月の給与が占めるため、月々の収入は読みやすいものの、賞与で大きく増える期待はしにくい構造だといえます。
どちらが良い悪いではなく、「安定した月収を重視したいのか」「業績や成果に応じて増える余地を重視したいのか」で、合う業種は変わります。求人票を見るときも、月給と賞与の比率を意識しておくと、提示年収の中身が理解しやすくなります。
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業種より給与を左右しやすい3つの要素
20代の給与を実際に左右するのは、業種そのものよりも次の3つであることが少なくありません。業種の平均と同じくらい、ここにも目を向けましょう。
1. 職種
同じ業種の中でも、営業・事務・技術職・販売職などで給与の決まり方は違います。たとえば平均給与が高い業種でも、未経験から入りやすい職種は給与水準が控えめなことがあります。「どの業種か」と同時に「その業種のどの職種か」を必ずセットで考えましょう。
2. 会社の給与制度と規模
基本給の上がり方、賞与の算定方法、手当の種類は会社ごとに違います。一般に企業規模によって賞与や福利厚生に差が出やすいと言われますが、規模が小さくても昇給の仕組みが明確な会社もあります。
3. 経験年数と昇給のペース
20代のうちは、今の金額よりも数年後にどこまで上がるかのほうが重要です。入社時の給与が同じでも、昇給のペースによって30歳前後の年収には差がつきます。求人票のモデル年収や、面接で聞ける昇給・評価の仕組みを確認しておきましょう。
業種別データを転職先選びに生かす4ステップ
業種別の平均給与は、使い方さえ間違えなければ転職先選びの心強い材料になります。次の4ステップで活用してみてください。
- 自分の現在地を確認する 源泉徴収票の「支払金額」が、税金などが引かれる前の年間の給与です。統計の平均給与と同じ基準で比べられます
- 候補の業種を「金額」「伸び」「賞与の割合」で見る 平均給与の水準だけでなく、前年からの動きと、年収が賞与に左右されやすいかどうかを確認します
- 求人票で中身を確かめる 月給の内訳、固定残業代の有無、賞与の実績、モデル年収を見て、平均との差がどこから来ているかを把握します
- 面接や内定後の条件確認で将来の伸びを聞く 昇給の時期と基準、評価制度、賞与の決まり方を確認し、数年後の見通しを立てます
ポイントは、業種の平均を「応募先を絞り込むための入口」として使い、最終的な判断は個別の求人の情報で行うことです。平均だけを見て応募先を決めると、入社後に「思っていた金額と違う」というずれが起きやすくなります。
「平均給与が高い業種=自分に合う業種」ではない
平均給与の高い業種は魅力的に見えますが、20代の転職では、金額以外の条件も同じくらい大切です。平均給与が高い業種の中には、専門知識や資格、一定の実務経験が前提になる職種が多いところもあります。未経験から入れる入口がどこにあるのかを確認しないまま目指すと、応募できる求人がほとんど見つからないこともあります。
また、給与水準が高い分、勤務時間が長かったり、転勤や夜間対応があったりと、働き方の負担が大きい職場もあります。反対に、平均給与が低めの業種でも、未経験から着実にスキルを積んで年収を上げている人はたくさんいます。
平均給与ランキングの上位だから、この業種に絞って応募しよう。
平均給与の水準と伸びを参考に候補を絞り、そのうえで未経験から応募できる職種と働き方の条件が自分に合うかを求人ごとに確かめよう。
業種別の平均給与に関するよくある質問
業種別の平均給与は、20代の給与の目安になる?
そのままの目安にはなりません。業種別の平均給与は年齢や雇用形態をすべて含めた平均なので、20代の実際の給与はそれより低く出ることが一般的です。業種同士の大まかな差をつかむ材料として使い、具体的な金額は求人票のモデル年収や給与の内訳で確認しましょう。
平均給与が高い業種に未経験から転職できる?
業種によっては可能ですが、平均給与の高さと未経験の入りやすさは別の話です。専門知識や資格が前提の職種が多い業種もあるため、平均の金額だけで選ばず、未経験歓迎の求人がどの職種で出ているかを確認してから判断するのが現実的です。
自分の年収が業種平均より低いのは、転職すべきサイン?
それだけで転職を決める必要はありません。年齢や経験年数、企業規模によって差が出るのは自然なことです。昇給の仕組みがあるか、数年後にどこまで伸びそうかを確認し、伸びしろが見込めない場合に転職を検討するのが納得しやすい判断です。
まとめ|業種の平均は「地図」、求人票は「現地の情報」
国税庁の令和7年分民間給与実態統計調査では、平均給与は487万円と5年連続で増え、業種別では電気・ガス・熱供給・水道業が最も高く、宿泊業,飲食サービス業が最も低い結果でした。業種によって約3倍の差があり、伸び率や賞与の割合にも違いがあります。
ただし、業種別の平均は全年齢・全雇用形態をならした数字です。20代の転職先選びでは、業種の平均を「地図」として候補を絞り、求人票の給与の内訳や昇給の仕組みという「現地の情報」で最終判断するのがおすすめです。
統計の詳しい内容や最新の数値は、国税庁の公式情報で確認してください。
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キャリアアドバイザーからのコメント
業種別の平均給与が発表されると、「自分の業界は低いから転職したほうがいいですか」というご相談が増えます。気持ちはよく分かりますが、平均には何十年も働いてきた人の給与も含まれています。20代の方がそのまま比べて落ち込む必要はありません。
大切なのは、平均との差そのものより、今の会社で数年後にどこまで伸びそうかです。昇給の見通しが立たないなら転職を考える理由になりますし、見通しがあるなら今の場所で経験を積むのも立派な選択です。数字は判断の材料として、上手に使ってください。
Career Vision キャリアアドバイザー
20代・未経験層の転職支援を担当